リバランスはリターンを向上させるか 数理(シミュレーション)編

前回の記事の続きです。

リバランスがリターンを向上させるかシミュレーションで検討してみます。

シミュレーション条件:

・アセットアロケーションは3資産(資産A、資産B、資産C)

・資産Aは年率算術平均リターン5%、年率ボラティリティ20% (国内株式を想定)

・資産Bは年率算術平均リターン8%、年率ボラティリティ18% (外国株式を想定)

・資産Cは年率算術平均リターン2%、年率ボラティリティ10% (国内債券を想定)

・資産A、B、Cの毎年のリターンは正規分布に従う。

・配分はA:B:C=25%:50%:25%、リバランス時もこの配分に戻す。

・リバランスは毎年する。

・投資期間は20年。

・課税や買値と売値のスプレッドなどは考慮しない。

・シミュレーション試行回数は1024回。

結果

まずリバランスしたときのリターンとリバランス無しのバイ&ホールド(以下単にバイ&ホールド)のリターンの分布を比較します。

グラフは20年後の年率幾何平均リターン(%)を横軸、頻度を縦軸にとったものです。

バイandホールドとリバランスのリターン分布比較

リバランス有りのほうがリターンの分布が狭まっていることを確認できます。ボラティリティ(リスク)を抑えるというリバランスの特性を表しているものと思われます。

それぞれの試行でのバイ&ホールドのリターンを横軸、リバランスのリターンを縦軸にとったときの散布図を以下に示します。グラフ中の黒線はy=xの直線であり、この直線より上に点がある時はリバランス>バイ&ホールド、下に点があるときはリバランス<バイ&ホールドです。

バイandホールドとリバランスのリターン比較

バイ&ホールド リバランス

リターン平均

(算術平均、%)

5.36% 5.14%

勝利数

(勝率)

498回/1024回

(48.6%)

526回/1024回

(51.4%)

リターンの平均はバイ&ホールドのほうが上でしたが、勝率としてはリバランスのほうが上でした。ただリターンも勝率も違いはわずかであり、この結果を持ってリバランスはリターンに向上しない(あるいはわずかでも向上する)かどうかは言えないかと思います。

例えば勝率ですが、1024回の試行で勝利数が498回(あるいは526回)というのは勝率が2分の1だとしても十分ありえる数値です。統計的な用語でいうと「勝率2分の1」という帰無仮説は棄却できません。なぜならば勝率2分の1、試行回数1024回の時の勝利数の95%信頼区間は482~542回、99%信頼区間でも472~552回だからです。(表が出る確率が2分の1であるコインを1024回投げたとき、表が出る回数は95%の確率で482~542回におさまり、99%の確率で472~552回におさまるということです。)今回の498回(あるいは526回)という勝利数は95%信頼区間の中におさまっており、取り立てて何か新しい意味を与えられる数値ではないです。

バイ&ホールドのほうが勝利数が低いにも関わらずリターンの平均が高いのは高いリターンが出たときの値に引っ張られているからでしょう。ある資産のリターンが好調な期間はリバランスしないほうがリターンが高くなるのは当然です。
リバランスはボラティリティを抑えるので、バイ&ホールドのリターンが高いときはリバランス<バイ&ホールド、不調のときはリバランス>バイ&ホールドになります。
グラフでもバイ&ホールドのリターンが5%を越えたあたりからリバランスとバイ&ホールドの大小関係が逆転しています。

バイandホールドとリバランスのリターン比較2

今回のシミュレーション条件で言えることは以下のとおりです。

  • リバランスが常にリターンを向上(あるいは低下)させるということは無い
  • 下記の理論どおりの傾向を現実的な条件で確認できた
    • リバランスするとリターン分布のバラつきが小さくなる
    • 資産のリターンが好調な時はリバランス<バイ&ホールド、不調の時はリバランス>バイ&ホールド

リターン向上/低下にはアセットアロケーションのほうが支配的でありリバランスの有無や頻度はあまり影響してこないというのが暫定的な結論でしょうか。

ただ今回のシミュレーションでは人間心理による平均回帰(バブルがはじけたり不景気の後に株価が戻ったりすること)や課税を考慮していません。平均回帰や課税を組み込んだシミュレーションをするとはっきりとした傾向が出るかもしれません。平均回帰をシミュレーションで再現するのは難しそうですが・・

今回は簡単なシミュレーションだったのでエクセルで出来ましたが、平均回帰や課税をシミュレーションに組み込むとするとScilabなどの数値計算ソフトのほうが良いかもしれません。大掛かりになりますがいつか挑戦してみたいと思います。


ここまで書いて罪悪感に耐え切れなくなったので告白しますが、今回のシミュレーションは他サイト様をパクってから大いにインスピレーションを得ています。参考にしたのはインデックス・ドライバーというサイトのリバランスシミュレータ(β版)、 リバランスシミュレータ(β1)、 リバランスシミュレータ(β2)、 リバランスシミュレータ(β3)リバランスシミュレータ(β4)という記事です。
データのまとめ方やグラフ描出も似せてしまいました。インデックスドライバーさんのグラフのほうがかなりきれいなので恥ずかしいですが。

ちなみにインデックス・ドライバーさんでのシミュレーションでもリバランスとバイ&ホールドのリターン差はあまり大きくなく、今回の私の結果とずれるものではないと考えています。

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