リバランスはリターンを向上させるか 実測編1

前々回前回からの続きです。リバランスがリターンを向上させるか実際のデータを使って検証します。

検証条件

国内株式:外国株式:国内債券=25:50:25の比率で保有する。リバランス時はこの比率に戻す。(海外債券も入れたかったのですがデータを公表しているサイトが見つかりませんでした)

国内株式はMSCI Japan Index、国内債券は日興債券パフォーマンスインデックス(総合)、外国株式はKOKUSAI Index(World ex JP)とする。すべてGross(配当再投資、課税無し)を選択した。ドル円為替レートは東京市場のスポット17時時点/月末を採用した。

国内株式と外国株式はMSCI、国内債券は日興リサーチセンター、ドル円為替レートは日銀のサイトよりデータ引用。

期間は1980年1月末~2016年6月末とする。これは国内債券のデータが1980年までしか遡れなかったためである。

リバランス頻度は4半期、1年、3年、5年、10年を設定しリバランス無しのバイ&ホールド(以下単にバイ&ホールド)と比較する。

検証結果

1980年1月末時点での資産額を100として資産額推移をグラフにしました。資産ごとでは外国株式>国内債券>国内株式の順にリターンが高く、リバランス(3年)のほうがバイ&ホールドよりリターンが良いです。

資産額推移_リバランス_3年_バイandホールド_各資産

リバランス(3年)、バイ&ホールド、各資産のリターン&ボラティリティを散布図にしました。また各資産のリターンとボラティリティを25:50:25の比率で相関係数も考慮して合成した値もプロットしてあります。

リターンとボラティリティ移_リバランス_3年_バイandホールド_各資産

 

リバランス

(3年)

バイ&ホールド 国内株式 外国株式 国内債券 25:50:25
リターン 7.30% 6.79% 4.32% 8.05% 4.83% 6.31%
ボラティリティ 14.7% 16.5% 23.7% 21.5% 4.28% 14.6%

相関係数 国内株式 外国株式 国内債券
国内株式  0.482 0.229 
外国株式 1 -0.558
国内債券 1

曲線は2資産での効率的フロンティアを表しています。国内株式がリターンもボラティリティも国内債券に負けているため3資産での効率的フロンティアに国内株式は入ってきません(外国株式と国内債券の組み合わせが3資産での効率的フロンティアと同じになります)

グラフから前々回の記事で紹介したリバランスボーナスの存在を確認することができます。

リバランスボーナス式

グラフ内の25:50:25がポートフォリオを構成する各資産の幾何平均リターンに、それぞれのウェイトを乗じた数値です。リバランス(3年)のリターン25:50:25を上回っている分がリバランスボーナスです。このリバランスボーナスのおかげでリバランス(3年)のリターン&ボラティリティは効率的フロンティアの外側に位置しています。

リバランス頻度を4半期、1年、5年、10年にしてもリターン&ボラティリティの値はあまり変わりません。ただどの頻度でもバイ&ホールドよりはリターンもボラティリティも改善しています。

 

リバランス

バイ&ホールド
  4半期 1年 3年 5年 10年
リターン 7.04% 7.11% 7.30% 7.12% 7.30% 6.79%
ボラティリティ 14.6% 14.6% 14.7% 14.9% 14.9% 16.5%

リターンとボラティリティ_リバランス頻度ごと_バイandホールド

ここまでの結果を見ると

・リバランスはバイ&ホールドよりリターンもボラティリティも向上する。

・ただしリターンの差は大きくて0.5%程度であり、課税やコストを考えると現実的にリターンが向上するかは怪しい。

・リターンの向上を目的にリバランスするのでなく、ボラティリティの管理をあくまで目的にしてリバランスすべき。

・今回の条件ではリバランスによるボラティリティの低減効果(1.6~1.9%)は頻度を変えてもあまり変わらず、リバランス頻度はあまり気にする必要はない。

という巷によくある結論に落ち着きそうです。

ただしこれは投資期間や資産配分を固定したときの結論であり、その条件を変えたときに常にリバランス>バイ&ホールドなのかは不明です。

ということで投資期間を色々変えて検討してみたところ必ずしもリバランスがリターンを向上させるわけではないことが分かりました。例えば投資開始を1980年でなく1988年の年始とした場合の資産推移は以下のようになります。1988年の年始での資産額を100としてあります。

資産額推移_リバランス_3年_バイandホールド_各資産_1988年から

 

リバランス

(3年)

バイ&ホールド 国内株式 外国株式 国内債券
リターン 6.11% 6.70% 0.12% 8.70% 3.68%
ボラティリティ 16.23% 18.85% 23.98% 23.26% 3.92%

ボラティリティはリバランス(3年)のほうが2.6%ほど低いですが、リターンはバイ&ホールドのほうが高いです。これは1988年~2016年にかけて国内株式と国内債券に比べて外国株式のリターンが突出して高いためです。バイ&ホールドのポートフォリオにおける外国株式の割合が高くなり全体として外国株式がリターンを牽引したと考えることができます。

次に投資開始年によって2015年年末時点でのポートフォリオの年率幾何平均リターンがどのように変わるかを計算してみました。投資開始年を1980年、1981年、・・・と変えた時に2015年年末での年率幾何平均リターンをプロットしたものがこちらです。

開始年によるリターン変化_リバランス頻度ごととバイandホールド

グラフは横軸が投資を開始した年、縦軸が2015年年末時点での年率幾何平均リターンです。折れ線が重なっていて違いが分かりにくいのでリバランスのリターンからバイ&ホールドのリターンを引いた差分をプロットしました。

開始年によるリターン変化_バイandホールドとの差分 

どのリバランス頻度も同じようなグラフを描いています。つまりリバランスでリターンが向上するかどうかは頻度より開始年(投資期間内でそれぞれの資産がどのような値動きをしたか)に大きく依存するということです。ちなみにリバランス(10年)は2005年以降は計算していませんが、これはそれ以降で投資を開始しても2015年までにリバランスが実施されないためバイ&ホールドのリターンと変わらなくなるためです。他の頻度でも同様に投資開始年は適宜削ってあります。

リバランスのリターンからバイ&ホールドのリターンを引いた差分の平均(投資開始年を1980年~2015年に変えた時の算術平均)とリバランスの勝率も計算してみました。リバランス期間が長い場合は上記に書いたように投資開始年を削っています。

 

リバランス

  4半期 1年 3年 5年 10年
バイ&ホールドとのリターン差分の平均 0.09% 0.30% 0.25% 0.02% 0.02%
勝率 58.3% 74.3% 69.7% 64.5% 50.0%

真の勝率が50%の時の

99%信頼区間

27.8%~69.4% 28.6%~68.6% 27.3%~69.7% 25.8%~71.0% 26.9%~65.4%

真の勝率が50%の時の

95%信頼区間

33.3%~63.9% 34.3%~62.9% 33.3%~63.6% 32.3%~64.5% 30.8%~69.2%

バイ&ホールドとのリターン差分が一番大きく勝率も高いのは1年ごとにリバランスしたときです。勝率は99%信頼区間の上限を越えており、「1年ごとのリバランスは有意にリターンを向上させる」という結論を出すことも可能です。ただ年率平均0.30%を得るために毎年リバランスしようとすると課税やコストで逆にマイナスになってしまうと思います。(詳細な計算はしていません)

今回の条件ではリターンとボラティリティにおけるリバランスの影響はあまり大きいものではありませんでした。(リバランスはリターンを向上させる傾向があるが、現実的には課税やコストを考えると逆にマイナスになりそう。またリバランスはポートフォリオ全体のボラティリティを抑える効果は確実にあるが、その効果は1.6~2.6%程度であった)

当然のことではありますが、期間が長くなれば通常はバイ&ホールドのほうがリターンはよくなります。リターンの良い資産の割合が高まるからです。今回は最長で36年(1980年~2016年)での検討でしたが、このくらいの期間ではリバランスとバイ&ホールドのリターンは大きく変わらないということなのでしょう。

一方で88年の長期でリバランス(1年)とバイ&ホールドを比較した結果バイ&ホールドのほうがリターンがよいというレポートがバンガードから出ています。

バンガード

リバランスしないとどうなるのか

年1回リバランスしたポートフォリオと、リバランスを実施しないポートフォリオのリスクとリターン比較:1926年~2014年

バンガード_リバランス有無比較

予想通り、このような長期では株式が債券のパフォーマンスを上回り、リバランスを実施しなかったポートフォリオは徐々に目標水準から外れ、株式のアロケーション比率は最終的には97%に達しました。上のグラフが示すように、リバランスを実施しなかったポートフォリオでは株式のアロケーションが高まり、リバランスを実施したポートフォリオを上回るリターンを生んでいます。しかし、この超過リターンには、ボラティリティが大きいという、重大な落とし穴があるのです。

最終的に株式の比率が97%になっているのに、年間平均リターンとしては1%程度しか変わらないんだなというのが正直な感想です。ありきたりな結論で申し訳ありませんがリバランスの有無や頻度より最初のアセットアロケーション(資産配分)のほうがずっとリターンやボラティリティに大きな影響がありそうです。

個人のインデックス投資家としては

・課税やコストや手間を考えて定期的なリバランスは実施しない

・アセットアロケーションを変えるタイミングで目標とする配分を狙うことに留める。変えるタイミングは結婚や出産などのライフイベントや10年に1度の見直し(資産取り崩しまでの残り期間が短くなっているため)やセミリタイヤ決行時など。

くらいで十分かなあというのが感想です。あまりにも配分が偏ったらリバランスしてもいいかもしれませんが。

今回は資産ごとのリバランスについて検討してみました。次回は同じ資産(例:国内株式)内でのリバランスについて考えてみます。

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