リバランスはリターンを向上させるか おまけ バイ&ホールド>資産ごと幾何平均リターンの算術平均の証明

リバランスはリターンを向上させるか 理論編でリバランスボーナスを解説する記事を紹介しました。

理論編

リバランスボーナス式

上記の式はリバランスありのほうがリバランスボーナス分だけリバランス無しのバイ&ホールド(以下単にバイ&ホールドと書きます)よりリターンが高いという意味ではありません

なぜならば上式に緑字で書いたポートフォリオを構成する各資産の幾何平均リターンにそれぞれのウェイトを乗じた数値の合計よりバイ&ホールドのリターンのほうが高いからです。

ポートフォリオを構成する各資産の幾何平均リターンにそれぞれのウェイトを乗じた数値の合計よりバイ&ホールドの幾何平均リターンが高いことは自明ではないかもしれないので、これを数学的に証明します。証明したい式は以下の通りです。

幾何平均リターンとバイandホールドのリターンの大小関係式

wiは各資産のウェイト、giは各資産の幾何平均リターンです。定義からwiの合計は1です。またgiは元本と最終資産額の割合から算出しているため非負です。(例えば10年後に-20%のリターンであったら年率幾何平均リターンgiは(1-0,2)^(1/10)≒0,98です。)

投資期間をn年とし、バイ&ホールドの年率幾何平均リターンを左辺、各資産の年率幾何平均リターンを右辺に置いています。

証明の準備として相加平均≧相乗平均の証明方法をまずはおさらいします。

相加平均≧相乗平均とは0<a、0<bとして以下の式が成り立つことを言います。

$$(1) \quad \frac{a+b}{2}\geqq\sqrt{ab} $$

a=bの時に等号が成り立ちます。

(1)式は関数f(x)=log(x)を用いて証明することができます。

相加相乗平均証明

x座標がaであるf(x)上の点をA、x座標がbであるf(x)上の点をB、x座標がaとbの相加平均((a+b)/2)であるf(x)上の点をCとします。またx座標がaとbの相加平均((a+b)/2)でありABを結ぶ直線状にある点をDします。DはABの中点なのでDのy座標はAのy座標とBのy座標の相加平均です。

図から分かるようにCのy座標>Dのy座標です。式で表すと

$$(2) \quad f\left(\frac{a+b}{2}\right) \geqq  \frac{f(a)+f(b)}{2} $$

です。f(x)=log(x)を代入して(2)式を整理すると

$$ \Leftrightarrow \quad log\left(\frac{a+b}{2}\right) \geqq  \frac{log(a)+log(b)}{2} $$

$$ \Leftrightarrow \quad log\left(\frac{a+b}{2}\right) \geqq log\left(\sqrt{ab}\right)$$

log(x)は単純増加関数なのでx1≧x2⇔log(x1)≧log(x2)です。よって

$$ \Leftrightarrow  \frac{a+b}{2} \geqq  \sqrt{ab} $$

が成り立ちます。以上より証明完了です。

この証明は区間[a,b]においてlog(x)は常にABを結ぶ直線より上にある性質を利用しています。この性質はlog関数だけでなく上に凸の関数ならばすべて当てはまります。そこでf(x)=x^(1/n) (ただしn>1)で同じ議論を考えます。

2変数での幾何平均リターンとバイandホールドのリターンの大小証明2

先ほどと違うのは関数がx^(1/n)になっていることと、単純な相加平均で無く重み付け平均を用いていることです。cはaとbの重み付け平均であり、aのウェイトをwa、bのウェイトをwbとしてc=waa+wbbです。定義からwa+wb=1, 0<wa<1, 0<wb<1です。DはAとBの重み付け平均の点なのでDのy座標はAのy座標とBのy座標の重み付け平均です。

ここでもCのy座標>Dのy座標です。式で表すと

$$(3) \quad f(c) \geqq w_{a}f(a)+w_{b}f(b)$$

です。c=waa+wbb、f(x)=x^(1/n)を代入して(3)式を整理すると

$$\Leftrightarrow \quad (4) \quad (w_{a}a+w_{b}b)^{\frac{1}{n}} \geqq w_{a}a^{\frac{1}{n}}+w_{b}b^{\frac{1}{n}}$$

です。

ここでa=(ga)^n、b=(gb)^nとなるga、gbを考えます。a,bが資産ごとの最終的なリターン、ga、gbがn年での幾何平均リターンとイメージしてもらえれば分かりやすいかと思います。a=(ga)^n、b=(gb)^nを(4)式に代入して

$$\Leftrightarrow \quad  (w_{a}g_{a}^{n}+w_{b}g_{b}^{n})^{(\frac{1}{n})} \geqq w_{a}g_{a}+w_{b}g_{b}$$

$$\Leftrightarrow \quad \sqrt[n]{\sum_{i}^{2}w_{i}g_{i}^{n}} \geqq \sum_{i}^{2}w_{i}g_{i}$$

が成り立ちます。これは証明したかった式の2変数(2資産)バージョンです。

幾何平均リターンとバイandホールドのリターンの大小関係式

次は3変数(3資産)を考えます。使う関数は同じくf(x)=x^(1/n)です。

3変数での幾何平均リターンとバイandホールドのリターンの大小証明

f(x)上の3つの点P1、P2、P3を重み付け平均で合成したPaveを考えます。P1、P2、P3のウェイトをそれぞれw1、w2、w3としてPaveはPave=w1P1+w2P2+w3P3で定義されます。定義からw1+w2+w3=1, 0<w1<1, 0<w2<1, 0<w3<1です。P1、P2、P3の重み付け平均であるPaveはP1、P2、P3が作る3角形の内部に位置します。またPaveのx座標をxaveとしてx座標がxaveであるf(x)上の点をPfとします。

図からP1、P2、P3が作る3角形(図中の青の3角形)はf(x)=x^(1/n)の下に位置することがわかります。つまりPfのy座標>Paveのy座標です。式で表すと

$$(5) \quad f(x_{ave}) \geqq \sum_{i}^{3}w_{i}f(x_{i})$$

です。xave=w1x1+w2x2+w3x3、f(x)=x^(1/n)を代入して(5)式を整理すると

$$\Leftrightarrow \quad (6) \quad \sqrt[n]{\sum_{i}^{3}w_{i}x_{i}} \geqq \sum_{i}^{3}w_{i}x_{i}^{\frac{1}{n}}$$

です。

ここで先ほどと同様にxi=(gi)^n(i=1,2,3)となるgiを考えます。xi=(gi)^nを(6)式に代入して

$$\Leftrightarrow \quad (7) \quad \sqrt[n]{\sum_{i}^{3}w_{i}g_{i}^{n}} \geqq \sum_{i}^{3}w_{i}g_{i}$$

が成り立ちます。これは証明したかった式の3変数(3資産)バージョンです。

変数がk個でも同じ議論です。P1、P2、・・・Pkの重み付け平均であるPaveはP1、P2、・・・Pkが作るk角形の内部にあり、そのk角形はf(x)=x^(1/n)の下にあります。よって(7)式を一般化して

$$\Leftrightarrow \quad (8) \quad \sqrt[n]{\sum_{i}^{k}w_{i}g_{i}^{n}} \geqq \sum_{i}^{k}w_{i}g_{i}$$

が成り立ちます。

これでk個の資産をn年間保持した時にポートフォリオを構成する各資産の幾何平均リターンにそれぞれのウェイトを乗じた数値の合計よりバイ&ホールドの幾何平均リターンが高いことを証明できました。なお全てのgiが等しい時(全ての資産がn年後に同じリターンを出した時)に両辺が等しくなります。

幾何平均リターンとバイandホールドのリターンの大小関係式

実際に実測編1でも各資産の幾何平均リターンにそれぞれのウェイトを乗じた数値の合計よりバイ&ホールドの幾何平均リターンが高かったです。

実測編1

リバランス(3年)、バイ&ホールド、各資産のリターン&ボラティリティを散布図にしました。また各資産のリターンとボラティリティを25:50:25の比率で相関係数も考慮して合成した値もプロットしてあります。

リターンとボラティリティ移_リバランス_3年_バイandホールド_各資産

グラフ内の25:50:25が各資産の幾何平均リターンに、それぞれのウェイトを乗じた数値です。で表されたバイ&ホールドのほうが高いリターンを示しています。

図ではリバランス>バイ&ホールドですが、常にそうなるとは限らないのは1連の検証で示したとおりです。

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