いつ死ぬかを考えずにマネープランは立てられない

明日死ぬと分かっていて投資する人はいません。

平均寿命が100歳まで延びたら必要な老後資金は増えます。

自分の寿命は誰にも分かりませんが、必要なのは定量的な寿命の予測とそれに基づいたマネープランだと考えます。

個人にとって投資や年金の計画には寿命の定量的な予測が欠かせないはずですが、そこに触れている投資ブログは見かけなかったので自分で書いてみます。老後資金のための投資や年金について考えるときに皆さんの参考になれば幸いです。

確率的には意外と長生きする

皆さんが何歳まで生きるかを断定することは出来ません。しかし○才まで生きる確率は何%か?や長生きの上位5%の人の寿命は何歳か?に答えることはできます。

厚生労働省の出した簡易生命表(平成27年度)から各年齢の死亡率(1年以内に死ぬ確率)のデータを取得しました。

死亡率

厚生労働省 簡易生命表(平成27年度)から楢道ショウゴ作成

死亡率(1年以内に死ぬ確率)は年齢ごとに上がります。主な死因が成人病や老衰によるものだからであり、医療が発達した国の特徴です。

各年齢の死亡率からそれぞれの年齢での累積死亡率を算出します。

累積死亡率

今回の記事で言いたいことは全てこのグラフに入っています。

例えばこのグラフから80歳の時点で男性は40%が死亡(60%が生存)しており、女性は20%が死亡(80%が生存)していることが読み取れます。

※100歳を越えたあたりで累積死亡率が100%になっていますが、これは簡易生命表上で105歳以上をまとめておりその死亡率が一律に100%になっているからです。105歳を越えたら必ず死ぬというわけではありません。

累積死亡率が50%を超える年齢(100人中50人が死ぬ年齢)は男性で83歳、女性で89歳です。この年齢を寿命中位数というらしいです。ちなみによく耳にする平均寿命は男性で80,79歳、女性で87,05歳(簡易生命表より)であり、日本では寿命中位数>平均寿命となっています。つまり平均寿命より長生きする人は半数より多いということです。今回引用したデータからは平均寿命より長生きする人は男性・女性とも56~57%程度でした。

寿命中位数と平均寿命の違いは統計的に言うと中央値と平均値の違いです。寿命中位数が中央値、平均寿命が平均値です。

死亡年齢分布

累積死亡率を微分したものが死亡年齢分布です。出生数が一定のときの年齢ごとの死亡者数に比例します。死亡年齢分布は左にダラダラと伸びた分布になっています。このような分布のとき中央値(寿命中位数)>平均値(平均寿命)になります。

死亡年齢分布_中央値_平均値2

死亡年齢分布の60~105歳までを拡大し平均値と中央値を図示

(※女性の死亡年齢分布の右端が急に高い値を示しているのは簡易生命表上で105歳以上の死亡率が一律に100%になっているからです。)

累積死亡率から長生き上位○%に入る寿命がわかります。

寿命

上位50%

(2人に1人)

上位33%

(3人に1人)

上位25%

(4人に1人)

上位20%

(5人に1人)

上位10%

(10人に1人)

上位5%

(20人に1人)

上位1%

(100人に1人)

男性 83歳  87歳 89歳 91歳 94歳 97歳 101歳
女性 89歳  93歳 94歳 96歳 98歳 101歳 104歳

例えば上位20%(5人に1人)を見ると男性でも91歳、女性だと96歳まで生きるようです。どうでしょうか?予想より長生きする確率が高い気がしませんか?

長生きリスクとマネープラン

マネープランを立てるためには何%の長生きリスクを覚悟するかを決めなくてはいけません。長生き上位50%(2人に1人)の年齢は表の通り男性で83歳、女性で89歳です。この年齢まで生きることは最低限想定してマネープランを立てるべきでしょう。

しかし上位何%まで長生きすることを想定しなくてはいけないのでしょうか?

25%(4人に1人)でしょうか?あるいは10%(10人に1人)?用心深い人で5%(20人に1人)くらい?さらに用心深い人は1%(100人に1人)まで想定するかもしれません。

これに対しては専門家の意見というものはありません。自分で決めて良い事ですし、また自分で責任を持って決めなくてはいけないことです。投資が自己責任であることと同じです。

私は上位10%くらいまで想定すれば十分かなと思っています。私は男性ですので94歳までのマネープランということです。50歳でセミリタイアするとしたらその後の44年間のマネープランを持っておく必要があります。正直長いですね。。。

そのときの年齢で長生きリスクは変わる

ここまでだと簡易生命表の解説に終わってしまうので1工夫します。

累積死亡率は0歳の赤ん坊が何歳で死ぬかの確率と同じですが、ある年齢まで生きた人にとってその確率は変わってきます。

累積死亡率

なぜならば60歳まで生きた人にとっては60歳での死亡確率は0だったということになるからです。男性の寿命中位数(100人中50人が死ぬ寿命)は83歳だったわけですが、60歳まで生きた男性は50%より大きい確率で83歳より長生きします。これは統計的にはベイズ統計、数学的には条件付確率の考えを用いて計算できます。

そこで現在年齢ごとの累積死亡率(すなわち寿命がくる確率)を計算してみました。

累積死亡率_現在年齢別_男性 累積死亡率_現在年齢別_女性

若いうち(40才くらいまで)はほとんど累積死亡率のグラフは変わりません。もともとの死亡率が低いからです。

累積死亡率(現在年列別)から読み取った長生き上位○%ごとの寿命は以下のとおりです。

寿命

現在

年齢

上位50%

(2人に1人)

上位25%

(4人に1人)

上位20%

(5人に1人)

上位10%

(10人に1人)

上位5%

(20人に1人)

上位1%

(100人に1人)

男性 0歳 83歳 89歳 91歳 94歳 97歳 101歳
80歳 88歳 92歳 93歳 96歳 98歳 102歳
85歳 91歳 94歳 95歳 97歳 99歳 103歳
90歳 94歳 96歳 97歳 99歳 101歳 104歳
95歳 98歳 100歳 100歳 102歳 103歳 105歳
女性 0歳 89歳 94歳 96歳 98歳 101歳 104歳
80歳 91歳 96歳 97歳 99歳 101歳 105歳
85歳 93歳 97歳 97歳 100歳 102歳 105歳
90歳 95歳 98歳 99歳 101歳 103歳 105歳
95歳 98歳 101歳 101歳 103歳 104歳 105歳

この表の見方ですが、性別と現在年齢と上位○%を選べば何歳まで生きるかが算出されます。例1:男性で現在80歳の方の上位25%(4人に1人)が92歳まで生きる。

例2:女性で現在90歳の方の上位10%(10人に1人)が101歳まで生きる。

現在年齢が80歳未満だと0歳とあまり変わらないため表から省きました。

※簡易生命表だと105歳以上の死亡率が100%のためそこが寿命の上限として算出されてしまいます。

私の場合94歳までのマネープランでよいと思っていますが、いざ90歳になると50%の確率で94歳より長生きしてしまうわけです。まあだからといって90歳になってから慌ててもどうしようもないですが。

長生きリスク対策にトンチン年金

長生きリスクに特化した対策としてトンチン年金があります。年金受取開始前の年齢で亡くなると掛け捨てですがその代わりに高い年金を受け取れる(あるいは安い掛け金で済む)年金です。

興味のある方は下記の日経マネー研究所やニッセイ基礎研究所のリンク先をご参照ください。

日経マネー研究所  「長寿年金」で考える 掛け捨て保険は本当に損か

 「トンチン年金」という年金保険の仕組みをご存知でしょうか。17世紀にイタリアのロレンツォ・トンチという人が考えたとされ、長生きする加入者ほど一生涯にわたり、しかも高い金額を受け取れる「長寿年金」です。その代わり年金支払い開始年齢に達する前に亡くなってしまうと払い戻しがなく保険料が掛け捨てになるなど、「生き残りゲーム」のような側面があります。

ニッセイ基礎研究所 米国の長寿年金 - トンチン性の活用は有効な長寿リスク対策となるか-

長寿年金は、年金の支払い開始年齢を大幅に遅らせ、超高齢期になってからの生活資金を確保しようとする個人年金である。退職時等(65歳等)に、退職貯蓄の一部から一時払いの年金保険料を支払っておき、20年間等の長い待ち期間(据置期間)の後、超高齢(85歳等)になってから、年金の支払いを受ける。以降、年金の支払いは、終身続く。年金受給開始前に、他の資産を使い切ってしまっていたとしても、残る超高齢の生涯、長寿年金により生活資金を確保することができる。

単身世帯が増えるなか魅力的な商品だと思うのですが、まだ日本では商品化されていないようです。しかし完全なトンチン年金ではない(完全に掛け捨てではない)ものの解約時の払戻金を低く抑えることでトンチン性を持たせた商品はあります。トンチン年金と通常の個人年金の中間のような商品ですね。日本生命の長寿生存保険「GranAge(グランエイジ)」という商品です。

日本生命 ニッセイ 長寿生存保険(低解約返戻金型)  

特徴
死亡保障を行わず、将来必要な資金を重点的に準備できる保険です。

リンク先によると年金受取開始前に死亡すると70%に低く設定された解約払戻金のみ受け取るそうです。中途半端なことをせずに死亡時の払戻金をゼロにしてほしいです。そうすることで年金受取時により多くの年金を受け取れる(あるいは必要な年金額を受け取るための掛金が低くて済む)からです。解約払戻金がゼロでは嫌というかたは通常の終身年金と組み合わせればよいだけです。ファイナンス的には同等です。

中途半端な払戻金が設定されているせいで完全なトンチン性を求める顧客のニーズに答えることができていません。米国では商品があるのに。。

将来日本でも完全なトンチン性を持った商品が出てくれば私も購入を検討しようと思います。資金の枯渇におびえてせっかくの長生きを楽しめないのは残念ですからね。

投資や年金は人生のリスクへの準備(必要経費)と割り切り、リスクが顕在化したときでも人生を楽しむめるようにしておきたいと思います。


国税庁の民間給与実態統計調査結果によると平均給与は男性502万円、女性268万円だそうです。女性のほうが長生きなのに年収が低いです。独身女性は老後の資金を用意するのが独身男性より大変ということです。

結婚すれば住居費などコストも抑えられますし夫婦で貯金・投資すれば老後の資金準備もしやすいでしょう。

老後の資金が不安という独身女性は楢道まで是非ご連絡ください。(これが言いたかっただけです)

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする