トンチン年金の活用 ~資産を気持ちよく使い切るために~

前回の記事でトンチン年金を金融商品として評価しました。

今回は具体的にどのようにトンチン年金を活用できるかについて考えてみます。

トンチン年金が無い場合のマネープランと実際

トンチン年金が無い場合のモデルストーリーとして太郎さん花子さん夫婦に登場してもらいましょう。架空の人物です。

太郎さんと花子さんは同い年の二人世帯です。太郎さんは今年定年を迎えました。退職後の生活費は月に25万(年300万)を見込んでおり(※1)年金は二人合わせて年200万(太郎さん:130万、花子さん:70万)です。不足分の100万円を貯金から取り崩しながら生活しようと思っています。

太郎さんは現役時代から計画的に貯蓄しており、退職時は3200万ありました。年に100万円の取り崩しなので夫婦二人なら33年(93歳まで)は生活できます。厚生労働省の出した簡易生命表(平成27年度)によると男性の寿命中位数(半数が生存する寿命)は83歳、女性の寿命中位数は89歳なので余裕を見込んだマネープランといえます。一方で太郎は自身が寿命中位数で亡くなる場合も考えてみました。83歳で亡くなったとすると残された貯金は900万(3200万-100万x23年)です。花子さん一人での生活費を月に18万(年216万)と見込む(※1)と花子さんの年金は年70万なので不足分の146万を貯金から取り崩す必要があります。900万から年に146万取り崩すと約6.2年(89.2歳まで)生活できます。この場合も寿命中位数までは生活できるので妥当なマネープランだと太郎さん・花子さんは考えました。

※1:生活費は金融広報中央委員会の家計の家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査] 平成28年調査結果家計の金融行動に関する世論調査[単身世帯調査] 平成28年調査結果を参考にしました。この資料によると60歳代の方の「老後のひと月当たり最低予想生活費」は二人以上世帯で30万、単身世帯で18万だそうです。

さて実際に太郎さんが寿命中位数で亡くなったときに花子さんは上記のマネープランの則ってお金を使えるでしょうか?これは明らかにNOです。医療費や介護費など人生にはイレギュラーなことが起きるからという理由ではありません。仮にイレギュラーなことが全く起きず、太郎さんも花子さんも結果的に寿命中位数で亡くなるとしても花子さんは上記マネープランに従ってお金を使うことはできないのです。これは不確実な未来に備えるための当然の心理によるものです。

花子さんの立場になって考えてみます。太郎さんが83歳で亡くなった時の貯金は900万でした。それから4年後、年146万ずつ取り崩してきた貯金は316万しか残っていません。自分があと何年生きるか分からない状況の中、これまでと同じペースで貯金を取り崩す勇気は花子さんにはありませんでした。貯金額が少なくなればなるほど生活費を切り詰めようとするのが当然の心理です。結果として89歳で亡くなるとしても実際には最後の数年は長生きリスクにおびえながら戦々恐々として過ごさざるを得ません。

これはあまりに寂しくないでしょうか?

そこでトンチン年金の登場です。

トンチン年金のある場合のマネープランと実際

前回の記事に書いたような終身トンチン年金ができたとします(※2)。

トンチン年金を金融商品として評価する

終身年金で年120万(月10万)貰う場合の一括支払い額 (手数料10%)

一括支払い額(万) 受取開始年齢
70歳 75歳 80歳 85歳 90歳 95歳 100歳
女性 支払年齢 65歳 2319 1741 1191 702,4 323,2 99,7 17,1
70歳 1794 1228 724,0 333,2 102,8 17,6
75歳 1290 760,8 350,1 108,0 18,5
80歳 834,3 383,9 118,4 20,3
85歳 463,9 143,1 24,5
90歳 211,0 36,1
95歳 77,8

 

※2:2017年1月現在、完全なトンチン性をもった年金商品は日本には存在しないようです。

この表は「受取開始年齢」から終身で年120万貰うためには「支払年齢」で一括で保険料をいくら払えばよいのかを試算したものです。

例えば花子さんが90歳から終身で年120万もらうためには65歳の時点で323,2万円払えばよいということになります。これくらいなら貯金から取り崩せますし、60歳以降のバイト代でまかなうことも可能でしょう。

この場合のマネープランは89歳まで貯金を取り崩した後はトンチン年金(年120万)と国からの年金(年70万)で生活していくというものです。国からの年金だけでは足りない分を60~89歳は貯金、90歳以降はトンチン年金で補うということです。

再び花子さんの立場になって考えてみます。太郎さんが83歳で亡くなった時の貯金は900万でした。花子さんはそれから6年間、年146万ずつ安心して貯金を取り崩すことができます。なぜなら90歳以降はトンチン年金が不足分を補ってくれることが分かっているからです。つまりマネープランどおりの生活を実際に過ごせるわけです。

長生きリスクを保険会社に負ってもらうことで安心してお金を使える。これがトンチン年金の活用方法だと思います。

トンチン年金を含め投資は人生のリスクへの準備と割り切り、リスクが顕在化したときでも人生を楽しむめるようにしておきたいと思います。

日本で買えるトンチン年金が欲しい

2016年1月現在、部分的なトンチン性を持たせた商品として日本生命のニッセイ 長寿生存保険(低解約返戻金型)  があります。部分的というのは年金受取開始前に死亡すると満額ではない(70%)にせよ解約払戻金を受け取れてしまうからです。その分のしわ寄せが給付金に来ているはずで、中途半端なことをせず完全なトンチン性のある商品が欲しいです。ただ日本では法規制の問題で解約払戻金が全く無い商品は認められにくいようなので難しいですね。

ニッセイ基礎研究所のレポートによると米国には完全なトンチン性のある商品があるようです。日本でも同じような商品がでることを望みます。

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